「ボカロ好き」
それは先日のTwitterトレンドに突如現れた言葉だった。
発端となったのはSixTONESがYouTubeにアップしたMV【うやむや】
こちらを見たファン、あるいは界隈の人間が「ボカロ好きな人は好きだと思う!」とこぞってオススメしたことが要因だろう。
そして、その少し前にこちらもYouTubeにアップされた、ジャニーズWESTの LyricVideo【カメレオン】
往年のボカロを通ってきた全てのジャニオタへ。とりあえず一回でいいから聴いてください…#カメレオン
— シイナ (@417_WEST) 2020年12月7日
ジャニーズWEST - カメレオン [Official Lyric Video] https://t.co/03WGJJMi75 @YouTubeより
私自身もこのように呟いたくらいにはこちらも「ボカロっぽい」疾走感あふれるピアノロックとなっている。
学生時代『ひとりカラオケフリータイム7時間ボカロ縛り』などをしていた私にとって、楽曲に対する「ボカロっぽい」は「最高!大好き!愛してる!」と同義であるが、世間的には曲に対して「○○っぽい」と表現するのは失礼にもあたるかもしれない。
…と、以降は少し自重していたのだが、【うやむや】に関してはSixTONESメンバーの松村北斗くんが、また【カメレオン】に関してはジャニーズWESTメンバーの藤井流星くんと神山智洋くんがそれぞれ「ボカロ調」「ボカロっぽい」と言及しているので、今回は敢えて堂々と「ボカロっぽさ」と「ジャニーズ」について、つらつらと書きたいことを書いていこうと思う。
大多数の人が詳しくは知らずとも、一度は耳にしたことがあるであろう「ボカロ」という言葉。
そもそも「ボカロ」とは何か。
「ボカロ」とは「VOCALOID」の略称で
VOCALOID(ボーカロイド)とは、ヤマハが開発した音声合成技術、及びその応用製品の総称である。(Wikipediaより)
簡単に言えば、パソコンに「♪ドの音で"あ"」と入力すれば「あ〜♪」と歌う声を作ることができるソフトだ。
つまり、打ち込みで作った曲にこのVOCALOIDの歌を乗せれば、楽器がなくとも歌が歌えなくとも、パソコン一台で楽曲が作れてしまうということだ。
VOCALOIDにはいくつか種類があり、その代表的なものが「初音ミク」である。
可愛らしいビジュアルに基本的な設定が付与されており、このキャラクターとしての「初音ミク」が歌手となって、あるいは曲自体の主人公となって「歌う曲」という形を基本として作られた「ボカロ曲」(それ自体をボカロと呼ぶこともある)は、主にニコニコ動画への投稿を軸に人気が高まった。
「VOCALOID」「初音ミク」の知名度をあげるキッカケとなった楽曲と言えば、2007年9月に投稿された【みくみくにしてあげる♪】そして同年12月に投稿された【メルト】だろう。
この【メルト】が発表されしばらくして、私は初めてボカロというものを知った。
特別ニコ動に入り浸っていたわけでもない私がその言葉を初めて目にしたのは、他でもない、当時常駐していたジャニーズの掲示板だった。
ジャニーズが好きな人間による様々な雑談が交わされるスレッドで「ボカロ好きだわ」「メルトいいよね」などと度々話題に上がっていたのだ。
詳しく知らない私は『【ボカロ】という曲と【メルト】という曲が流行っているんだな』くらいにしか思わず、「ボカロ」が曲のタイトルではないことに気付くのは、それからしばらく時間が経ったあとだった。
そんな私がボカロにハマったのは2010年頃〜、いわゆるボカロ全盛期の時代である。
その年を代表する曲といえば
え?あぁ、そう。/papiyon (蝶々P)
nico.ms
モザイクロール/DECO*27
nico.ms
あたりだろうか。
そして、ニコ動の中というインターネットでのブームから、世間一般へとVOCALOIDの名前が広まるキッカケとなった
千本桜/黒うさP
nico.ms
「カゲロウプロジェクト」通称「カゲプロ」として様々なメディアミックスが行われた
カゲロウデイズ/じん (自然の敵P)
nico.ms
また、こちらの二曲も聴いたことがある人が多いかもしれない。
脳漿炸裂ガール/れるりり
nico.ms
上記に貼り付けた曲は、当時の再生回数の高いものばかりだが、その中でもある程度意図的に選んだ。
それはいわゆる「ボカロっぽい」と言われる曲調の源流となっているであろう曲々だ。
この「ボカロっぽい」と云う言葉は、ボーカルに機械音のような加工がされていることではなく、メロディーや歌詞、オケなどの曲そのものの雰囲気を指していることが多い。
しかし、もしこのブログで初めていくつかのボカロに触れた人がいれば「曲のジャンルバラバラじゃない…?ボカロっぽいとは…?」となっているかもしれない。
無理もないだろう。
そもそも「ボカロっぽい」には音楽的に明確な定義はないのである。
VOCALOIDは実際に録音した人間の声を使って音声を合成しているが、最終的には機械音。そのキーや速度には人間的な縛りがない。
通常人間が出すには困難な高い音域や、口が追いつかないほどぎゅうぎゅうに詰め込んだ主旋律とそれを可能にする打ち込みによるオケ(生楽器の場合も多々あるが)、TVで大っぴらに放送するには向いていない・あるいは厨二病と言われるような歌詞や言葉遊びなど。人間ではない、機械だからこそ表現できる曲。
それこそが最も広く共通認識としてある「ボカロっぽい」ではないかと、個人的には思っている。
私が初めてジャニーズの曲で「ボカロっぽい!」と思ったのが2013年に発売された山下智久さんの【怪・セラ・セラ】だ。
MV自体は(少しトンチキだが)普通のジャニーズのもので、独特な歌詞と癖のあるメロディーラインが「ボカロっぽい」に繋がったのだと思う。
また2016年にリリースされた嵐のアルバム【Are You Happy?】に収録されている二宮和也さんのソロ曲【また今日と同じ明日が来る】
こちらは歌詞自体に癖はないが、一小節に文字を詰め込む早口な歌詞と幻想的なオケが特徴。
ちなみに二宮さんは古くから、ボカロを聴くことを公言していたジャニーズでもある。
そして2018年にリリースされたジャニーズWESTのアルバム【WESTV!】に収録されている、桐山照史くんと小瀧望くんのユニット曲【月詠人】
このブログに貼った曲だけではピンとこないかもしれないが、ボカロには和風曲というのが非常に多く、「VOCALOID和風曲」と云うタグの存在からも分かるように、ひとつのジャンルとして在るように思う。
それを好んで聴いていた人はこの曲のオケだけで「ああああっ!!!あの頃の…ッッ!!」となるだろう。だって私がそうだった。
私はこれまでこの三曲を「三大ボカロっぽいジャニーズ曲」として、ジャニーズに興味のないボカロ好きの前でよく歌ったりした。
その際には大体同意を得られたし「好き」と言われることが多かった。(気を遣われただけなのかもしれないが)
他にもボカロっぽいな〜と思う曲はいくつかあるのだが、時間は飛んでここ数ヶ月の話になる。
2020年11月にYouTubeに投稿されたHey!Say!JUMPの【Puppet】をご覧いたいだきたい。
「ボカロ好きなら身に覚えあるよね!?」と問い詰めたくなる、歌詞を全面に押し出し、映像編集のみで魅せるMV。
その顔面を大きな売りにしているジャニーズでも、本人達が登場しないMVというのは過去にもいくつか存在する。しかし、ここまでリリックを強調したMVは珍しいと思う。
しかもこの曲は童話「ピノキオ」をモチーフにしている。
そんなんさぁ!ボカロ通ってきた人間が嫌いなはずないやんかぁ!本音そのまま言うとめちゃくちゃ羨ましいよぉ!うわぁん!!!
と慟哭した(大袈裟)日から1ヶ月程後。
ジャニーズWESTの【カメレオン】がアップされたのである。(何度だって聴いてほしいのでもう一度貼る)
リアルに泣いた、朝7時から。
ずっとずっと、WESTにこういう曲を歌ってほしかった。
メロディアスかつテンポが速い難しい曲を、その高い歌唱技術を存分に活かして、気持ちとしての痛みを伴いダイレクトに届ける歌。
「ボカロっぽい」とは言ったが、歌唱自体はほぼソロもしくはハモリの声数少なく、そして機械音的な加工をしないそのままの人間の声で勝負しているので、とにかく感情の質感が高いのだ。もはやボカロと人間のいいとこ取りである。最高、大好き、愛してる。
…おっと、少々自我が出過ぎました。
さて。
そしてそのさらに1ヶ月程後にアップされたSixTONESの【うやむや】
「ボカロっぽい」と話題になったこの曲は、ここまで私が書き連ねてきた"ボカロっぽいジャニーズ曲"とは少し違う括りにいるように思う。
ボカロブームもピークを迎え、2014年頃には、ニコ動の人口は徐々にYouTubeへと流れ始め、著名なボカロP (ボカロ曲を作る人のこと)の活動も縮小していった印象だ。
ではそのボカロPは一体どこへいったのか?
勿論単純に作品投稿をやめた方もいるが、彼彼女らの中には活動場所をYouTubeに移行すると同時に、VOCALOIDの枠だけに留まらず「音楽クリエイター」としてセルフプロデュース、あるいはバンドなどのグループとして…つまり"人間の声での音楽活動"へと形を変えていった人達が多く存在する。
「ボカロPが人間の声を使う」については先述した【メルト】の作者であるRyoさんを中心としたクリエイター集団「supercell」がその先駆けのイメージだが「supercell」の活動はかなり初期に始まっている且つ少し複雑ではあるので一概にはまとめられない。
またこの「ボカロPが人間の声を使う」音楽活動に関しては、いわゆる「歌い手」の存在も絡んでくると思うのだが、私はその界隈を避けていたので今回は省略させていただく。(Eveさん載せたかったけども)
そしてその最も代表的な方がボカロP「ハチ」こと米津玄師さんだ。
「ハチ」名義で投稿したボカロ曲は、様々なジャンルが入り乱れるボカロシーンの中においても独特で、一際異彩を放っていた。そんな唯一無二でありながらも、その楽曲は多くの視聴者の心を掴んだ。
そのハチさんの独特な楽曲は、それそのものが「ボカロっぽさ」と呼ばれる一端を担うものだと、私は思っている。
リンネ/ハチ(私が一番好きなハチさんの楽曲)
nico.ms
他に同じようなラインとして有名なのはこの辺りだろう。
シャルル/須田景凪(バルーン)
youtu.be
花に亡霊/ヨルシカ
youtu.be
YELLOW/神山羊
youtu.be
秒針を噛む/ずっと真夜中でいいのに。
youtu.be
(厳密には少し括りがズレるが)
そして昨年の紅白出場が記憶に新しい
夜に駆ける/YOASOBI
youtu.be
これらの曲を「ルーツがボカロ」と言い切ってしまうのは些か乱暴ではあるのだが。
いわゆる「ボカロっぽい」はあるものの、基本的には人間が歌うことが意識としてあるので、キーや速度もある程度普通に歌える範囲に抑えられているように思う。(その理論でいけば【カメレオン】もこちらに括られるのだが、そういうことではない)
米津玄師さんやYOASOBIの、紅白出場・TVや CMでのタイアップなどに見られるように、今やネット発の音楽は、メジャーミュージックシーンを席巻している。
スマートフォンの普及に伴うYouTubeやサブスクリプションの爆発的な需要拡大、そしてそれらにいち早く適応した、いわゆるネット発ミュージック。
それらは最早ネットカルチャー、そしてサブカルチャーでもなく、お洒落で洗練された"みんな聴いてる"流行の最先端として存在している。
そんな楽曲達の多くに当てはまるもう一つの特徴である「繊細な手描きのMV」も相まって、SixTONESの【うやむや】は、前半に記したVOCALOIDとしての「ボカロっぽい」ではなく、音楽シーンの最先端としての「ボカロっぽい」に括られるのではないかと、私は漠然とそう思っている。
どちらが良い悪いとかの話ではないので誤解なきよう。
私はどちらも大好きです。
いまやメジャーなジャンルとなった「ボカロっぽい」
それは体感、ジャニオタだけが特別好きな曲調と言うわけではない。主にボカロ直撃世代からそれを知らない今の若者世代まで、幅広い層に支持されるものだろう。
「ジャニーズっぽい」を脈々と受け継ぎつつ、時代時代で流行った音楽を取り入れていく。
それは何も今に始まったことではないが、現在の若手グループはそれが柔軟且つアンテナが敏感であるように思う。
すごく格好悪く言うならば「時代が私の好みに追いついた」とでも表現しようか。(笑うところ)
…何はともあれ、これからも増えていくであろう「ジャニーズ」による「ボカロっぽい」、ひいては「ジャニーズ」と「異ジャンル」との融合、そこから生まれる各グループの「色」がとても楽しみである。
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ジャニーズWEST【カメレオン】収録
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SixTONES【うやむや】収録
アルバム【1ST】通常盤
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